『ストーリーとしての競争戦略』を読んで

こんにちは、マーケティング担当の金尾です。

今回は、ビジネスカテゴリーで書き始めた書評シリーズの第六段として『ストーリーとしての競争戦略』(楠木建著、東洋経済新報社)をご紹介したいと思います。

本書の概要をかいつまむと、
「優れた戦略にはストーリーがあり、ストーリーを構成する要素の一つ一つが有機的に(かつ時系列的に)つながりを持っているため戦略のイメージが動画のように見えてくるものになっている。ストーリー戦略を描くことができれば長期的な利益の源泉を生み出すことができる。そのストーリー戦略を描く上で原理原則となりうる要素を事例を紐解きながら明らかにしていく」
といった内容になっています。

と書いてもこれだけではよく分からないと思うので、いくつかセンテンスをピックアップしながら解説して行きたいと思います

ストーリーの戦略論とは、個別の打ち手でいきなり勝負するのではなく、因果論理でつながった打ち手の「合わせ技」を重視する戦略思考です。・・(中略)・・ストーリーの一貫性の正体は、「何を」「いつ」「どのように」やるのかということよりも、「なぜ」打ち手が縦横につながるのかという論理にあります。

『ストーリーとしての競争戦略』第3章 「静止画から動画へ」より引用

まず大前提として筆者は「物語のような形で戦略を書きましょう」ということを言っているのではなくて、初めに目指す理想的なゴールをイメージし、そのゴールに向かう道筋をさまざまな仮説を元に要素を紡ぎ合わせながら検討していく。その結果として、優れた戦略は主要な要素の繋がり(因果論理)が物語のように流れのある形になるということを言っています。

おそらくここでまず大切なのは、ゴールを形作ると思われる要素を(アクションレベルではなく)できるだけ大きな粒度で導き出して行くことだと思います。ここでふと頭に浮かんだのが以前このブログで紹介した「マンダラート」の思考法です。3×3 の 9マスのマス目の真ん中に達成したいことを書き込み、その周辺の 8マスに実現に必要な要素を書き込んで展開して行くというものです。やってみるとすぐにアクションアイテムを書いてしまったりと粒度がバラバラになってしまいがちなのですが、「本当にこれが最大公約数なのか?」と自問しながら進めていくとドンドン進化させることができるので、戦略の要素を検討する方法の一つとして良いのかも知れません。

特に大切なのは「なぜ」についてのリアリティです。

『ストーリーとしての競争戦略』第4章 「始まりはコンセプト」より引用

この「なぜ」は、前述の要素が連動する理由について言及しているのですが、その要素を構成する人や組織が「どうしてその(期待する)方向に動くのか?」、「本当にそうなのか?」は市場調査や Web検索などでは分からないと言われています。

その上で、以下のように述べています。

ごく日常の生活や仕事の中で、嬉しかったこと、面白いと思ったこと、不便を感じたこと、疑問に思ったこと、そうしたちょっとした引っ掛かりをやり過ごさず、その背後にある「なぜ」を考えることを習慣にする。

『ストーリーとしての競争戦略』第4章 「始まりはコンセプト」より引用

これが「コンセプトを構想するための最上にして最短の道」と言われています。

これは私にも納得感がありました。このブログを書き始める前は、基本的に本を読んでも読んだきりで数ヶ月もするとどんな話だったかすらよく覚えていないことの繰り返しでしたが、書評を書くようになってからは気になったセンテンスを書かれているページ番号とともにメモするようになりました。一通り読み終わってから、再度そのメモに目を通して対象の箇所を読み直してみるとその箇所が気になっていた理由が明確になりますし、深く記憶されるようにもなっています。

今はまだ本の中での気づきだけですが、それ以外の生活の中での「ちょっとした引っ掛かり」をメモし反芻することを習慣にできるようになれば凄い力になる気がします。単純なことでも習慣化するのは難しいと思いますが、挑戦してみようと思っています。

優れたストーリーの条件は、そのストーリーを話している人が「面白がっている」ということです。

『ストーリーとしての競争戦略』第7章 「戦略ストーリーの骨法10カ条」より引用

この本の中でも、「戦略ストーリーを描く目的は、長期的な利益を生み出すこと」と書かれていて、あくまでも「長期的な利益を生み出す」ことがゴールではあるのですが、戦略ストーリーを書いている人自身が「面白がる」ためには、そのゴールの先に広がる世界に(心から)目指すものが無いと難しいのではないかなと思うところがありました。私としては「パッション」という言葉が一番近いイメージですが、最終的にその戦略を取る究極の理由は理屈ではなくて立案者の「パッション」が必要なのではないかなと。

会社で新しい企画書を起こしているとどうしても「目標を達成するため」に取りうる最短のプランを頭をウンウン言わせながら考えてしまいがちですが、自分自身が「面白がる」ことのできる要素を盛り込むことはできないかという視点も意識してみるのが良さそうですね(もちろん仕事なので面白い要素を全く盛り込めないケースもあるとは思いますが ^^)。

ストーリーの面白さは、戦略の実行にかかわる社内の人々を動かす最上のエンジンになります。

『ストーリーとしての競争戦略』第1章 「戦略はストーリー」より引用

ここでも「面白さ」と書いているのは単に「協力者にとっての利益」の観点での Win-Win の状況だけを言っているのではなくて、その戦略そのものに面白みを感じて「いっちょ、やったるか!」的な場合なども想定して書かれているのではないかと思いました(相手が損得勘定だけの人なら無理ですが)。

前述した「パッション」もかなり情緒的な言葉ですが、「論理」と「情緒」のバランスはこの戦略ストーリーの中でも実は重要なポイントになっているのではないかと思っています。

最後に

ここまで私の気になったセンテンスをベースに紹介してきましたが、これらはほんの一部に過ぎません。そもそもこの本は 500ページもあり、実際の企業のケーススタディなどを通してより具体的に「ストーリー戦略を描く上で原理原則」を明らかに述べられています。

ここに書いた内容の他にも多くの気づきを与えてくれます。特に新規事業開発など企画書を書くことのある人にとてもオススメの一冊です。
既に色々な戦略論の本を読まれてきた方も、一度読んでみると良いのではと思います。

それでは、また。

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