こんにちは、マーケティング担当の金尾です。
昨年の終わり頃から「グルメシリーズに続く、何か私でも連載できるネタは無いものか」と考えていたのですが、もともと読書好きなこともあったのでちょっと試しに「本の紹介記事」に取り組んでみようと思っています。
(実はこれまでも「データの正しさ?」という記事で『ファクトフルネス』を紹介したり、「章立てに、やたらと人の名前が出てくるビジネス書」というタイトルで『SHOE DOG』を紹介したりしていたので、もしよかったらそちらの記事も読んでみてください)
さて、今回取り上げるのは『イノベーションのジレンマ – 技術革新が巨大企業を滅ぼすとき』。昨年末から読み始めたものの、忙しさにかまけてなかなか読み進めることができなかったのですが、ようやく先日読み終えることができました(そんな中、著者のクレイトン・クリステンセン教授が先日お亡くなりになられたのは本当に残念です)。
この本の内容は、一度読んだ後に現場で試行錯誤しつつ、折を見てまた読み直すことを繰り返すことでで初めて本質に近づけるようなものだと思いましたが、まずは初回で心に残ったポイントを整理してみたいと思います。
まだ読まれたことの無い方の参考になればと思います。
「破壊的技術」は最新でも高度でもなく、むしろ劣っている
この本の中では、市場の形を変えてしまう「破壊的技術(Disruptive Technologies)」と既存の製品の性能を伸ばす「持続的技術(Sustaining Technologies)」の2つが出てきます。どちらが良い悪いという話ではなく、会社の規模や特性、既存の主業務を取り巻く関係性(顧客、パートナー、投資家等)などによって取り組みやすさや選択は異なる。ただ、特に市場をリードしている企業は「破壊的技術」に直面したときに対処を怠ると足元を救われてしまう(優秀な経営者、規模の大きな企業であるほど対処が難しいジレンマが生まれる)。その理由と対処方法をさまざまな業種の事例を交え考察したというのが本の内容になっています。
私は読み始める前は、本のタイトルに「イノベーション」という言葉が使われていることも手伝ってか、「破壊的技術」とは最先端で高度な技術のことを指しているのかと思っていたのですが、読み進めると全く違って(登場当初は)むしろ性能的に劣っているもということでした(例えば、メインフレームに対してのパソコンだったり、レーザープリンターとインクジェットプリンターなど)。この時点で目からウロコです。
そもそもどこか頭の中で「イノベーションとは最先端で高度な技術を用いてなされるもの」との概念に凝り固まってしまっていたようです。
また一方で「新しい技術を用いて性能向上を図る」ことが「持続的技術」ということでした。
確かに新しい技術を採用することが必ずしも良いことではないという意識は常々持っているのですが、一方で革新的なことを行うには最先端の技術を活用しなくてはならないという間違った概念が意識下に存在していたことに気付かされました。
初めから破壊的技術の市場は目星をつけられない
前述の通り「破壊的技術」は性能が劣っているので、既存顧客が求めているニーズに合いません。そうなると、土俵を変えて新しい市場を見いださなくてはならないのですが、これまでにない技術(製品)であるがゆえにプラン策定に使える確度の高いデータを得ることもかなわないという困った状況に直面することになります。
「破壊的技術」で成功を収めた企業は、有意なデータや知見を得るための計画を立て、(固定概念や先入観を持たず)試行錯誤を繰り返す中で、結果的に(予想もしていなかった)主要な用途を見出すに至ったそうです。
ただ試行錯誤した結果「破壊的技術」でなかった場合のことを考えると、恐ろしいですよね。あらかじめ「破壊的技術」であることなんて分からないのですから。
なので、余力がある大企業のほうが取り組みやすいと思われるのですが、大企業だからこそ求められている成長規模が高いため先の見えない(期待する規模の利益が得られる見込みが示せない)ものは価値がないと判断する力が(自然に)働いてしまうようです。
一方で小さい企業であれば(はじめは)小さな市場であったとしても価値を見出しやすく、かつフットワーク軽く動きやすいので破壊的技術の市場を見出すチャンスを得やすいということのようです。
開発における最大の課題は、マーケティング
“本書で検討した例では、実績ある企業が破壊的技術に直面したとき、開発における最大の課題は技術的なものであり、既存の市場に合うように破壊的技術を改良することだと考えるのが普通である。破壊的技術の商品化に成功した企業は、開発における最大の課題は、マーケティング上のものであり、製品の破壊的な特性が有利になる次元で競争が発生する市場を開拓するか、見つけることだと考える。”
クレイトン・クリステンセン著/伊豆原弓訳 『イノベーションのジレンマ 増補改訂版』(翔泳社)より引用
マーケティングの立場としてはここにあるように「顧客が求めている機能や性能が足りていない」と言ってしまったり、ともすれば広告をバンバン出すとかキャンペーンを実施するといった方向で検討を進めてしまいそうですが、「まずは扱っている製品やサービスの特性と正面から向き合って、その特性を活かせる用途をゼロから考え直してみる」ことがとても重要なんだと思わされました。
日頃から向き合ってないわけではないのですが、もう一歩思考を深めてみて、「ムリなものはムリ」と諦めたり手っ取り早い施策に飛びついたりせず「新しい市場を見つけることはそもそも難しいことなんだ」とグッとこらえて進めてみる力が必要だなと。
もちろん「いま手元にあるものが「破壊的技術」には当てはまらないことの方が普通」だと思いつつも、万が一の可能性を夢見つつ足を進めて行きたいと思っています。
最後に
この本はどちらかと言うと「実績のある大企業におけるイノベーションに取り組む課題を明らかにし、対策を示す」という内容になっていて、経営上、組織上、ビジネス構造上の課題(ジレンマ)についての考察が多岐にわたってなされています。
なので、必ずしも新しい市場に参入しようとしている小さい企業の文脈で書かれているわけではないのですが、逆説的に読むことで出し抜くポイントを知ることができると思います。
とはいえ、この記事を書き上げる中で頭の中を整理するのに四苦八苦しました。ということは、「やっぱりまだまだ読み込みが足りない」わけですね ^^;
ただ、読み込みを進めれば進めるほど実務に反映できるポイントが見えて来そうな感触はあるので、今後に少しでも上手く実務に活かせたことがあれば、また折を見て紹介させていただければと思っています。
ちなみに弊社が提供しているサービスや製品は以下のページで紹介しています^^
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皆さんの観点で見ていただき、「これはこういう風に使えないの?(使えたら良さそうなんだけど)」といったものがあればぜひお問い合わせいただければ嬉しいです。一緒に役に立つ新しい用途を生み出せればと思っています。
では、また!