章立てに、やたらと人の名前が出てくるビジネス書

こんにちは、マーケティング担当の金尾です。
最近読んだ本の中に、とにかくセクション名に人名が多く使われているビジネス書がありました。
その本は『SHOE DOG(シュードッグ)』。
2018年のビジネス書大賞にも選ばれた本なので読まれた方も多いかもしれませんが、NIKEの創業者のフィル・ナイト氏がNIKEの黎明期を綴った内容になっています。

言外に醸し出す表現力

ビジネス書のカテゴリになっていますが、経営者の哲学を滔々と語るでもなく、逆に淡々と当時の出来事が書かれているので、小説のようにすっと読み進めることができる本です。
ただ、読み進めるうちに太字で書かれたセクションのタイトルに人の名前が使われていることが多いことに気づきました(例えば「ビル・バウワーマン」とか「オニツカ氏の演説」とか言った感じの)。
そもそもかなり細かくセクションが切られている本なのですが、読み終えてから数えてみると25%ものセクションに人の名前が入っていました(246セクション中の62セクション)。
ほとんどが靴を商材に起業しようと志したきっかけから上場に至るまでに起こった出来事を物語のように淡々と記す文体で、特に「この人との出会いが人生を変えた」とか「この人が居なかったら今の自分はなかった」とか取り立てて強調して述べているわけでもなかったので、何でこんなに人の名前を使うのかなと思っていたのですが、途中から「あー、この本はこれまで関わった人たちへの感謝を示す意味でも書き始めたんじゃないかな」という思いがするようになりました。
くどいようですが、著者のナイト氏は全くそういった言及はしていなくてあくまでも私が受けたイメージにすぎません。ただ逆に直接的な表現をしなくても「情の深い人だな」と感じさせることができるのは凄いことだと思います。
まぁこの点がこの本の本筋ではないことは確かですが、50年近く前のベンチャー企業の立ち上げ時の状況を知るという意味でもとても興味深い内容だったので、まだ読んでいない方は手にとって見られることをおすすめします。

バットフェイス?

最後にもう一つ気になったことを紹介します。
NIKEでは「バットフェイス」という経営陣が郊外の保養地に数日缶詰になって話し合う会が年に二回行われているそうです。ここではお互いの立場は関係なく意見をとことん言い合う場であり「会社の精神、使命と気風」を体現したものとして尊重されている会のようなのですが、この「バットフェイス」が英語でどう書かれているものかがパッとイメージできませんでした。「バットフェイス(ダメ男)」と日本語版では訳されていたのですが、「Bad Face」でもないだろうし「Bad Faith」でも絶対ないだろうなと思いつつ(そもそも「バッド」じゃなくて「バット」ですし)、もやもやしてしまったのでちょっと調べてみたところ分かりました! 「Buttfaces」でした。
「faces」は文字通り集まっている面々(顔)を示しているのですが、その前の「Butt」が曲者でした。これまで使ったことがない単語だったのでまた調べを進めてみると「角で突く」とか「(批評・怒りなどの)的、標的」とか、「Butt into」とすると「(他人のことに)口出しする」といった使われ方をする単語のようです。相対的にはあまり良いことを表現するときには使われ無さそうな(どちらかというとスラング的な)言葉を、会社のとても重要な経営会議の名前に使う辺りにもこの会社のカルチャーが現れているようで興味深かったです。
立場に関わらずオープンに意見を言い合えることはとても重要ですよね。私自身、何か気になったことがあっても「(自分に直接関係ないし)まぁ、良いか」と流してしまうことがあるのですが、そこをあえて「Butt into」してみる事も意識してみたいなと思っています。
ともあれ、どうやらこの『SHOE DOG』は Netflix で映画化もされるそうです。時期はまだ未定なようですが、そちらも楽しみですね!
よければ弊社のサイトも見てみて下さい!
https://houwa-js.co.jp/

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