『イシューからはじめよ』を読んで

こんにちは、マーケティング担当の金尾です。
ようやく緊急事態宣言も解除されました。まだまだ予断を許さない状況ですが、少なくとも安心して外出することのできる世の中に早くなってほしいものですね。
この期間中は、働き方が変わったりタスクの性質上できない仕事が出てきてしまったりして、多かれ少なかれ「仕事」に改めて向き合う機会になったのでは無いでしょうか。私もその一人ですが、ふと思いついて『イシューからはじめよ』(安宅和人著、英治出版)という本を引っ張り出して読んでみたところ、こんな時期だからこその気づきも得られたので、少し紹介してみたいと思います。
書かれている内容をまるっと実践するのはなかなか難しそうですが、できるようになるために意識して取り組んだら良くなりそうだし、これならできるかもというレベルの行動についても書いてみました。

イシュー(課題)を見極める思考法と理解を促す表現法

とても勉強になることが多く書かれているのですが、大雑把に言うと「バリューの高い仕事」を行う上で必要となる「イシュー(課題)を見極める思考法」と「(他者に)理解を促す表現方法」について書かれている本だと私は理解しています。
この本の中で言う「バリューの高い仕事」とは、「イシューの質(重要度)」と「解の質(イシューに対する答えの明確度)」が高い水準にある仕事と定義されています。さらに取り組み方としては、まず「質の高いイシューに絞り込む」ことが先決で、その後「解の質を上げていく」という進め方でなくてはならない(逆の順番だと著しく生産性が下がる)と言っています。
ここだけ切り出して書くと分かりづらいかもしれませんが、私なりに意訳すると「その仕事がもたらす意味や効果をしっかり意識することがまずは重要で、その上で考えた結果、他にイシュー度の高い課題が見つかった場合はそちらを優先して取り組むべき。むやみやたらとタスクをこなした結果で課題が解決される道を進むのは非効率である。」ということなのだと思います。
当たり前のように感じる方もおられるかもしれませんが、私自身は振り返って見ると、結構目の前のタスクを捌くことに集中してしまっていることがあります。そういう時は得てして「仕事をしている!」という気になってしまいやすいんですよね。逆に今回ようにコロナの影響でいくつかの仕事が止まってしまい、時間が空いてしまったような場合にも「なにか手を動かせることを探さなくちゃ」と考えてしまいがちなのも同じことのような気がします。
もちろん考えるだけで手が全く動いていなければ、それはそれで意味がありませんが、忙しい時でもそうでもない時でも常に頭の片隅に「なんで?」という意識を持つようにすることが一つのステップなのではないかと思っています。
皆さんの中でも「あれ、この打ち合わせ、私参加している必要ある?」と思った経験がある人がいるかもしれません。そういう時に(内職をするのではなく)きっぱり「参加しない」という選択をするということも「イシューの見極め」のひとつなのかもしれません。

言語化すると明確になる

「何が課題で、何故それが重要度の高いと言えるか」という問いを繰り返したり掘り下げたりすることで「イシューの見極め」を行っていくようなのですが、そのプロセスの中でも ”なにはともあれ「言葉」にする” という箇所がありました。「自分がどのように捉えているか」を言葉で表現することではじめて明確にすることができると言っています。著者は「言葉にすることを徹底しよう」「言葉に落とすことに病的なまでにこだわろう」と常々言われているそうなのですが、ここは本当にその通りだなと私も感じます。
以前書いたプランニングのコツについての記事でも触れたのですが、頭の中でなんとなく考えていたことを書き出してみると、抽象的で何がポイントなのか分からない文章になっていたり、筋道が通っていない内容になってしまっていたりすることが多々あります。だからこそ、私はキーワードだけでも良いのでなるべく早い段階から書き出してみるようにしています。特にホワイトボードか模造紙などの大きめの紙を用意して書き出してみて、そのあと俯瞰してみるという作業を繰り返すとどんどん整理されていくのでオススメです。
あと、「言葉で表現するときのポイント」として “「主語」と「動詞」を入れる” ということも書かれていました。ここでは「主語と動詞を明確に入れることで、違う認識を生じさせることを防ぐ」ことを主眼に書かれていましたが、考えを整理する上でも重要なポイントだなと感じています。私は特に骨子やサマリについてはあえて英語の文章で書いてみるようにしていますが、これも同じ効果があると思います。
いずれにしても「言葉として書き出してみる」こと自体は難しくないことですし、やってみただけ実感できるはずなので、試してみると良いと思います。

「理解する」ことの本質は既知の2つ以上の情報がつながること

この本を読んで一番目から鱗だった言葉は以下の一文です。

“「人が何かを理解する」というのは、「2つ以上の異なる既知の情報に新しいつながりを発見する」ことだと言い換えられる。”

著者は脳神経学の学位も持っている人なので、そもそも脳神経の仕組みとしてもそういうものだと説明されているのですが、これは意識たことが全くありませんでした。
特に「既知の情報」であるところが驚きで、これまでは理解するということは「新しい情報」の積み上げのようなイメージでいましたが違うんですね。新しい情報がすでに知っていることや体験したことがあることに紐付けられて初めて人間は理解できるようになっているそうです。
誰かに理解してもらうためには「受け手の既知の情報と新しい情報をつなげる工夫が大切」と本文でも書かれていますが、これは仕事を進めていく上でも今後意識して行きたいと思わされました。

最後に

この本は結構重そうなテーマで書かれていますが、文章はとても読みやすく簡単に読み切ってしまいます。それと同時に、読み返すほどに新しい気づきが生まれる本でもあるとも思っています。
「働き方」や「仕事の内容」にこれまで以上に向き合わなくてはならなくなっているこんな時期だからこそぜひ読んでみてほしい一冊です。
では、また!
芳和システムデザインが提供できる価値

関連記事

  1. 『誰のためのデザイン?』 を読んで

  2. 『失敗の科学』を読んで

  3. 『人は簡単には騙されない -噓と信用の認知科学-』を読んで

  4. 『イノベーションのジレンマ』を読んで

  5. 展示会の企画から業者選定までのフロー

  6. 『1分で話せ』を読んで