データの正しさ?

こんにちは、マーケティング担当の金尾です。
連休明けで「まだ本調子になりきらないな」という方もおられると思いますが、そんな方の気分転換にでもこのブログの記事を読んでみていただければと思っています(過去の記事の一覧もぜひ眺めて見てください)。
さて、令和になって一回目の今回は私が連休中に読んだ本を少し紹介させていただこうと思います。
『ファクトフルネス』という本なのですが、いまだに本屋でも平積みされているような本なので、皆さんの中でも読まれた人がおられるかもしれません。私も少し前に知り合いから勧められて買ってはいたのですが、ほとんど読み進められず放置されていたのを10連休という機会を使って読み終えてみました。
日本語版の副題に “10の思い込みを乗り越え、データをもとに世界を正しく見る習慣” と書かれているように、内容としてはいくつもの多くの人が間違って認識している事象を例として上げつつ、「データをもとに正しく事実を捉える」ことの重要性と、そのために「心に留めておくべきこと」について書かれています。
(ちなみに日本語版の副題に書かれている「習慣」という言葉は原書の副題には使われていないのですが、とても良く本書の意図を表現したコピーだなと思いました。)
ともあれ、今回は本書の中からいくつか気になった点を紹介してみたいと思います。

数値を捉える力

正直なところ、本書の前半ではいくつもの「多くの人が間違って思い込んでいること」が畳み掛けられ、「ほらね、間違ってたでしょう?」と斜め上から言われているようであまり読み進む気が起こりませんでした。
というのも、マーケティングという職業柄かもしれませんが、数値は恣意的に生み出すことができる怖さを知っていますし、「そもそもこの本に書かれているデータは正しいのか?」という考えが頭をよぎって書いてある内容がすっと入ってこなかったのです。
でも読み進めている内に「この著者の方が言いたいことは、それら一つ一つの事象そのものではないし、数値をこねくり回す方法でもない」ということが分かってきて、それ以降はとても興味深く読むことができました。

“なによりも、謙虚さと好奇心を持つことを子供たちに教えよう。”

ハンス・ロスリング、オーラ・ロスリング、アンナ・ロスリング・ロンランド著/上杉周作、関美和訳 『ファクトフルネス』(日経BP社、2019年)より引用

本書の最後の方でことさら強調されていたわけではないのですが、上記の一文がありました。これは「子供に限らず私を含めた大人たちにも当てはまることだな」と私の心に残った一節でした。
謙虚であれば、読み始めた時の私のように初めから疑ってかかることはせず一旦受け止めることができますし、好奇心があれば(受け止めた上で)その数値の意味や正しさを掘り下げるよう努力したくなることでしょう。読みながら身につまされる思いでした。
また面白いエピソードがありました。
私がこの本を読んでいる最中に小学三年の子供が私のところに来て「お父さんはどんな本を読んでるの?」と寄ってきたので、ちょうど読んでいたページに書かれていた以下の質問を彼に投げかけて見ました。

“質問:いくらかでも電気が使える人は、世界にどれくらいいる?”
(A)20% (B)50% (C)80%

ハンス・ロスリング、オーラ・ロスリング、アンナ・ロスリング・ロンランド著/上杉周作、関美和訳 『ファクトフルネス』(日経BP社、2019年)より引用

彼は「20%」と即答。「残念、答えは(C)の80%なんだって」と伝えると「えー、アフリカとか中国の奥地とか電気の通ってないところ多そうじゃん」とのこと。小学三年生ですら、すでにそういう印象(間違った思い込み)を持っていることに驚きを覚えながらも「じゃ、残りの電気が使えていない20%の人は何人だと思う?」と聞いたところ「うーん」と頭を抱えていたので「世界中の人口が76億人として、ざっと15億人くらいいるんだよ」と伝えると「やっぱり、多いじゃん」とのことでした。
とてもタイムリーなエピソードでしたが、これは結構本質を突いているのではないかと思います。
割合としての「80%」も多いですし、絶対数としての「15億人」も多いか少ないかと言えば多いのです。また、80%という数値を見て「まだ20%、電気を使えない人がいるんだ」という見方をする人もいると思います。データそのものは変わっていないのですが、数値の表現の仕方と受け取る人の心構えと言うか意識によって「データの持つ意味が変わってくる」。だからこそ本書で書かれている「数値を見る上で心に留めておくべきこと」を習慣化できるようになることが重要なのだろうと思わされる事象でした。
マーケティングという仕事をしていると、意図的に数値を用いたり表現方法を工夫することが良くありますが、単に数値を用いることによるプラスの影響だけでなく、その表現がもたらす負の影響がありはしないかという点も考慮すべき事項だなとも思わされた次第です。
(ちなみに本書の副題には「10の思い込み」というフレーズが入っていますが、これは「(タイトルに)数値を入れると反応が良くなる」という顕著なマーケティング手法ですね^^;)

焦り本能

いくつかの章立てで、数値を間違った見方をしてしまう要因について書かれているのですが、その中に「焦り本能」という章がありました。
これは「今すぐやらないとダメです!」とか「本日限定、特別割引実施中!」とか言って煽られると、人は焦ってしまいよく考えもせず行動を起こしてしまう本能があるというものです。
これも私にとってはよく分かる話でした。本書では、あえて他者の行動を促すために、意図的に「これに今すぐ取り組まなかった場合に起こりうる最悪の結果」の数値をメッセージにして聴衆の焦り本能を煽ろうとした例を取り上げていましたが、これも確かに気をつけるべきことだと私も思います。
私の場合は、他人から煽られるだけでなく勝手にこの「焦り本能」を発動してしまい、「今すぐやらなくてはダメだ!」と思ってしまう癖があるので、特によく分かる章でした。
そうならないためにここではまず、「自分の焦りに気づくこと」、それから「焦り始めたと感じたら深呼吸して逆にゆっくり考えるようにすること」、また「そんな時こそデータにこだわること」などが大切と書かれています。
特に「そんな時こそデータにこだわること」は盲点でした。他人のメッセージで焦り本能が煽られた場合は、「そのメッセージに書かれた数値が正しいか?正しかったとしても本当に重要か?」を緊急で重要な事ならなおのこと確かめてみると良いとのこと。
得てして私の場合は、急ぎの場合であればあるほど対応方法に頭が行ってしまい、問題の本質に向き合い直してみるということは意識して考えたことがありませんでした。
これは新しい習慣として身につけられるよう取り組んでみたいと思っています。

本の内容を理解するコツ

これまで紹介した内容は、この本のごく一部だけで、これの何十倍も示唆に富んだ内容が書かれています。
また私も一度読んだだけではまだまだ理解しきれていないと感じていて、2度3度と読み直して見たいと思っているのですが、そういう少し難しい本を読んだ際に一つ心がけていることがあるので、最後にその内容を少し紹介させていただきます。
それは、まず一度目はそのまま最後まで読み切った上で、その後に目次に書かれている大項目(各章のタイトルなど)を書き出してみるということです。
この本の場合は以下のようになります。

第1章  分断本能 「世界は分断されている」という思い込み
第2章  ネガティブ本能 「世界はどんどん悪くなっている」という思い込み
第3章  直線本能 「世界の人口はひたすら増え続けている」という思い込み
第4章  恐怖本能 危険でないことを、恐ろしいと考えてしまう思い込み
第5章  過大視本能 「目の前の数字が一番重要だ」という思い込み
第6章  パターン化本能 「ひとつの例がすべてに当てはまる」という思い込み
第7章  宿命本能 「すべてはあらかじめ決まっている」という思い込み
第8章  単純化本能 「世界はひとつの切り口で理解できる」という思い込み
第9章  犯人探し本能 「誰かを責めれば物事は解決する」という思い込み
第10章 焦り本能 「いますぐ手を打たないと大変なことになる」という思い込み
第11章 ファクトフルネスを実践しよう

ハンス・ロスリング、オーラ・ロスリング、アンナ・ロスリング・ロンランド著/上杉周作、関美和訳 『ファクトフルネス』(日経BP社、2019年)より引用

できれば、より意識に残るので手で書き出すことをおすすめします。
こうすると、一度読んでみて理解しきれていないところが見えてきますし、かつ一度読んだあとだからこそ筆者がどうしてこういう章立てにしたのかという意図も分かってきて、次に読み返す時の理解度が断然変わってきます。
単純に読み返すだけでなく、こういう工夫をしながら本を読んでみると更に楽しくなるのでオススメです!

最後に

さて、思いがけず長編になってしまいましたが、もしこの本に興味が湧いたようであれば是非一度読まれることをおすすめします。
数字の捉え方の勉強にもなりますので、お仕事にもきっと役立つと思いますよ。
また機会があれば、別の本も紹介したいと思います。
ではでは。

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